📂 シリーズ:なぜ“住みやすい街”から人が出ていくのか?
第1章「住みやすさと『住みたい』のズレ
年末年始、地元へ帰る人たちの波を見かける。 懐かしい場所に向かう顔は、どこかうれしそうで、少し照れくさい。
でも、地元が好きでも、住み続けない人たちもいる。
なぜだろう。 僕自身も、そのひとりかもしれない。
今回はカクトくんと博士の対話を通して、 “好きだけど戻らない”――そんな静かな感情を見つめます。
博士、この前、帰省ラッシュのニュースを見たんですけど……。みんな地元に帰るんですね。やっぱり、地元が好きだからですか?
ええ、地元への愛着は大きな理由ね。でも、“好き”という気持ちだけでは説明しきれないところもあるのよ。
えっ、そうなんですか?僕、好きならそのまま住み続けたらいいって思ってたんですけど……。
カクトくん自身は、どう? 地元、好き?
好きですよ。帰ると、空気とか風景とか、なんだかほっとします。でも……なんかモヤモヤするんです。
そのモヤモヤ、少し教えてもらえる?
うまく言えないんですけど……。地元にいると、子どものころの僕のままで見られてる気がして。親戚とか、近所のおばちゃんたちに、いつまでも“小さい頃の僕”のまま話しかけられる感じがして……。あれ、なんかちょっと、居心地が悪いというか。
うん、それはとても自然な感覚よ。長く知っている人たちほど、どうしても“昔のあなた”のイメージで接してしまうものなの。
大学に出て、都会に来たとき、最初は不安だったけど……、誰も僕の過去を知らないのが、逆にすごく自由に感じたんです。今の自分を見てもらえるっていうか……。
ええ、それが“環境を変える自由”ね。都会には、誰かの記憶に縛られない“今の自分”で生きられる空間がある。
でもそれって、地元を嫌いになったわけじゃないんです。好きな気持ちはちゃんとある。だから、余計にモヤモヤするのかも……。
そうね。好きなのに離れる。それは矛盾じゃなくて、“今の自分にとって自然な選択”なのよ。
自然な選択……?
人は成長すると、過去のイメージだけで縛られることに息苦しさを覚えるもの。だから、過去にとどまることよりも、未来に向かって新しい居場所を探したくなる。
なるほど……。でも、帰省ラッシュってあんなにたくさんの人が動くじゃないですか。そんなに地元から出た人、多いんですか?
実はね、帰省や年末年始の大移動に関わる人は、日本国民の約1割から2割と言われているの。延べ人数で2000万人前後。もちろん観光も含まれるけれど、かなりの割合で「地元を離れている人たち」が一時的に戻っている計算よ。
ええっ、そんなに……。じゃあ、地元から出た人たちが、実は社会の中ではすごく多いんですね。
そう。特に若い世代では、地方出身で都会に拠点を移している人がかなり多いわ。そして、彼らの多くは“地元は好きだけど、現実を考えると戻らない”という選択をしている。
現実……。たしかに、都会に出ると、仕事も学校も、友達も、選択肢がすごく広がりました。それはやっぱり、大きいですね。
ええ、都会には“選べる自由”がある。それは、生き方そのものの幅を広げる自由でもあるのよ。
うーん……。やっぱり、好きな場所だけで人生を決めるのは、難しいんですね。
そう。人は「好きな場所」ではなく、「今の自分が呼吸できる場所」を選び取る生き物なのよ。
呼吸できる場所……。たぶん僕、地元が嫌いなわけじゃない。でも、今の自分で自然に呼吸できる場所を求めたら、都会にいることになったんだと思います。
うん、それはとても素直で、自然なことよ、カクトくん。
なんか、少し気持ちが軽くなりました。戻らない自分を、ちゃんと受け止めてもいいんですね。
ええ。過去を大切にすることと、未来に進むことは、矛盾しない。あなたの選んだ道が、あなた自身を一番大事にしている証なのよ。
ありがとうございます、博士。少しずつ、自分の選択に胸を張れるような気がしてきました。
それがきっと、これからのカクトくんを強くしていくわね。
地元を離れる理由は、好きな気持ちが足りなかったからじゃない。
そこには、ふたつの静かな動きがあった。
ひとつは、心のこと。
昔から知る人たちのなかでは、どうしても”あのころの自分”のままで見られる。
成長した今を、ちゃんと生きたくなっただけだ。
もうひとつは、まわりのしくみのこと。
長く続く場所では、役割や関係が固まっていく。
新しい場所では、今の自分をゼロから見てもらえる。
心と、社会。
その両方が重なったとき、
人は静かに、違う場所へ歩き出す。
離れることは、嫌うことじゃない。
自分を、ちゃんと生きたかっただけなのだ。
【備考】
📎 タグ:#富山 #移住 #若者流出 #住みやすさ #地元を出る理由
🏷 カテゴリ:富山移住シリーズ / ヨミノ博士ブログ




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